とても長い時間をかけて修理してきたベヒシュタインのフルコン黒艶消し
ついに作業完了しました。
といっても今回の依頼主であり持ち主でもある調律師さんの手によって張弦だとかアクション修理だとか、まだまだこれから長い時間をかけて素晴らしい楽器として蘇っていくわけですが。
1972年製 BECHSTEIN Model E
最初はなかなか酷い状態でした。
脚・棚板・親板リム・親板内側・鍵盤蓋・屋根など木工修理の箇所多数、
今回かなり大変な修理の連続でしたが、中でも一番大変だったのは脚・鍵盤蓋・棚板でした。
脚の木工
脚は内部の芯から接ぎ目が割れていてどうやって修理するか悩みました。
直すにもバラさないと直せないのでまずはクサビを切って脚を分解。
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そして問題の脚部分、、、結果、最終手段的にこうなりました。。。サマーカットされたプードルの脚みたいです。
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そして削った分だけ新しい木を接着。
時間をかけてガッチリ接着してなんとか最終的にこのように復活
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棚板の木工
棚板の両サイドもバックリ割れてしまっていたのでルーターで削り取って中を直してからの再生
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親板の木工
親板まわりは一見大丈夫そうに見えて実はダメという部分が複数。ところどころ木工修理された形跡がありその修復箇所がダメ。
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木工修理されてますが中に空洞が出来てしまっていて押すとわずかですが動いてる。メーカーがやった修理なのか途中でどこかで修理されたのか判らないけど、後々さらに動いてしまって塗装の浮きだとか割れに繋がると嫌なのでそれらも修理が必要でした。いくつか穴をあけて接着剤を充填。
そして親板のフロント部
ここも中に問題があったので表面の木は削り落として中を直してから表面を貼って修復。
内部の木が反って動いて接合部分が剥がれてしまったという感じ。脚の芯材と同じですね。これもガッチリと接着してから削り落とした部分を再生と。
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ベヒシュタインの親板の中ってこうなってるんですね。
マクリの木工
マクリ(鍵盤蓋)はかなりの大手術でした。
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木の接ぎめから裂けていてそれぞれの木が黄色矢印のように動いてしまってるわけです。
そこで赤矢印のようにクランプ してくっつけようとしたわけです。が、ちょっとした問題を甘くみてました。
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クランプ で力をかけたら、、、
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もうクランプ できません。
裂け目は敢えて削り拡げて、割れのいちばん奥まで接着剤をいれ削り取った部分は木工処理。折れた部分も接着剤を圧入してガッチリと固定。(重要な箇所で使う接着剤はその辺で売っているような普通の木工ボンドではなくピアノメーカーがピアノを製造する時に使うような特殊な木工ボンドです。念のため)
大変だったのは湾曲した部分。
湾曲した部分は平にならないので削って平にしなければならない⇨ヒンジがハマるはずの溝も削り取るしかない⇨溝を作り直さなきゃならない(ちゃんと機能する精度で)という感じで魔の連鎖。
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なんとかこんな感じで綺麗に直すことが出来ました。
予定外の修理が次から次へと増えていき、いつ終わるのかと精神的な負担がマックスでした。
でも、どうしてもキチンとした修復がしたかったんです。
本気の修理をしなくても表面上きれいに仕上げるのは簡単ですが、それだとこの先何十年もノートラブルとはいかないはずです。
このピアノは1972年製でここまでおよそ50年。次の50年もつように、そして50年後(自分も今のオーナーの方も生きてないと思いますが)次の誰かが修理する時まで、そしてその時修理する人が「以前に修理した人はこのピアノをちゃんと大切に修理したんだな、だから自分も」と思ってもらえるように。
何よりこのピアノが次の世代に大切に受け継がれていく事を願って。
ブログを書き始めて5ヶ月、このピアノの修理を始めたのは約3年前でした。
この他にも多数の木工修理をしましたが残念ながら写真は撮っていません。まさかブログに投稿する事になるとは思っていなかったので。
いま改めてこうやって振り返ってみると確かに正しい直し方だったなとか今ならもっとこういった材料でこうやるなとか変化や進歩を感じられ、自分にとっても良い勉強になりました。本当に感謝です。
(後半)は主に塗装作業〜完成までを書きたいと思います。後編はコチラ