ピアノの塗装についてちょっと解説してみたいと思います。
ピアノ塗装といっても仕上げに使う塗料の種類によって塗りの工程も変わってきます。
まずは、現在のピアノで多く使われてるポリ(ポリエステル)黒 鏡面仕上げで説明してみましょう。(その他の仕上げの種類についてはこちら)
ポリエステル塗料は硬度が高くとても硬いのでキズがつきにくく、鏡面に磨き上げた綺麗な艶が長期間持続します。
塗装
塗装から仕上げまでの工程は大変で上塗りの吹き付けだけでも6〜7回(7層)くらいの塗り重ねが必要です。しかも塗り重ねるタイミングがよくないと仕上げに大きく影響してしまうので、気温や湿度を考慮してタイミングを外さないように塗り重ねていきます。)
全塗装となるとこの上塗りの塗装作業だけで6時間ほどかかります。
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そのあと乾燥期間をおいて研ぎの作業が待っているわけです。
研ぎ
研ぎ とは簡単に言えばサンドペーパーで塗料を削り、平滑な面を作って
ペーパーの足(ペーパーのキズ)を磨きが出来るレベルまで細かくしていく作業です。
ポリはとても硬いのでかなりの手間がかかります。
まずは、粗い番手から始めていきます。
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まず面出し
大きな面は各種サンダー、細かいところは当て木を使い
#180のペーパーで平滑な面を出します。
ここが最初の大きなポイントで
研ぎが足りなくてもダメ、研ぎすぎたらダメ
という重要なところです。
その後、#180で作った平滑な面を崩さないように気をつけながら
ペーパーの目消し
#320 #600 #1200 #2000(場合によってはさらに #2500 #3000)と徐々にペーパー足を細かくしていきます。
これだけの研ぎに耐えるだけ塗っておくと言うのも厚塗りの理由です。
![](https://pianotosou.com/wp-content/uploads/2021/09/D8AD3D5B-CA0B-466B-99AF-44CBABA98CB1-768x1024.jpeg)
全塗装の場合、全てのパーツの全ての塗装面にこの作業をしていくので気が遠くなります。
この作業を何千回とやってきた自分が朝から晩までやってもとても1日じゃ終わりません。
○それでいてこの研ぎの作業を手抜きすれば
⇨ 仕上がりが悪くなる
○もし削り過ぎてしまえば
⇨ 下地が出てしまって塗り直し
塗り直しになればその後またこの作業が待っています。当然その作業時間、もう一度塗るための塗料、ペーパー類の材料が全て無駄になります。
それを恐れて研ぎが甘くなれば
仕上げが悪い ⇨必要な番手から研ぎ直し ⇨ 研ぎ過ぎになる ⇨ 下地出る ⇨ 塗り直し
↑
これ、最悪パターンです
熟練するまではまさに地獄のような工程です。
![](https://pianotosou.com/wp-content/uploads/2021/09/3D10D691-D0CC-4FFE-8683-7CE6DAFF8C5D-1024x768.jpeg)
磨き
ここまで来たらようやく磨きです。
あとちょっとです。
でも実は磨きも3〜4工程あります(笑)
簡単に説明しますのでもう少々お付き合いくださいね😊
![](https://pianotosou.com/wp-content/uploads/2021/09/FEBCD5CA-B90E-4C03-B6B3-4AD505650C14-768x1024.jpeg)
ウールバフ、ネルバフ、スポンジバフとコンパウンドを使って磨いていくのですが、ペーパーの時と同じように粗磨きから徐々に段階を追って磨きキズを細かくしていくだけです。
キズを 肉眼では見えないレベル まで細かくしていくと言うわけです。
(ここまで細かいと『キズ』と言っていいか微妙ですが)
![](https://pianotosou.com/wp-content/uploads/2021/09/7F9F42BF-EAB4-4B8F-96D2-A100BC2C827C-1024x768.jpeg)
☆ちなみにバフとコンパウンド選びがこれまた非常に難しくて、この塗装の場合はこのバフとこのコンパウンド! という具合にベストマッチを見つけないとほんと磨ききれないんです。
(この話は改めて別の機会に書きたいと思います。)
![](https://pianotosou.com/wp-content/uploads/2021/09/683FC2BD-4638-42A9-98E3-E67EAC8BBC4F-768x1024.jpeg)
最後に
と言う感じで仕上がりなんですが、これはあくまで
最後の上塗り塗装〜各パーツの仕上げの話で、、、 しかも黒塗りの話なわけで、、、
木目の塗装の場合は工程が増えるし、共通作業もよりシビアになり。。。
これがポリではなくウレタンやラッカーの場合また少し工程に違いがあり
さらにピアノにはポリッシュ以外の様々な塗装仕上げがあります。(塗装の仕上げの種類について)
その場合また全く工程が違ってきます
そして、それらそれぞれの前には塗装の中で最も重要である下地作業がそれぞれあるわけです。
解体から始まって各部のチェック、必要なら木工修理や復元、塗装の剥離、木地調整、下塗り、下研ぎ。
場合によっては 中塗り中研ぎ。
あと、ペダル ネジ ヒンジ などの金属磨きも
全て仕上がったら組み立て〜各部チェック
膨大な作業を経て完成します。
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簡単に言ってしまえば、めちゃくちゃ面倒くさい作業をめちゃくちゃ長時間やる仕事です。
ほんとよく辞めずに続けられるな〜
と自分でも思いますʬʬʬʬʬ
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![](https://pianotosou.com/wp-content/uploads/2021/09/D62D137B-9FFD-4BE2-9ABF-DC0EF397BCF6-768x1024.jpeg)
最後の最後に
でも、ちょっとだけ自慢できるとしたら
これ全部1人でちゃんとやれる塗装屋。。。ほぼいないらしいんですよー😁
でも間違いなく、関わってくださる本当にたくさんの方々にお仕事はもちろん、アドバイスや気遣いや指摘などをいただいて今まで続けてこれています。
まだまだ未熟な部分もたくさんありますので、日々精進していきたいと思います。これからも宜しくお願いいたします。
ピアノ塗装に携わって22年
独立開業して7年
辛くて辞めようと思ったことは何度もありましたが、辞めなくてよかった〜
塗装について、塗装屋について、まだまだ やりたいこと 研究したいこと がたくさんあるのでどんどん前に進んでいきたいと思います。